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2008年1月 8日 (火)

名優・三國連太郎さんの〈オーラ〉

エッセイスト 武部好伸

 2008年を迎えました。わけのわからん、けったいな事件や出来事が相次いだ昨年より、少しは明るい年になってほしいと切に願っています。

Photo_14  初夢はとくに見ませんでしたが、お正月にぼんやりと家で過ごしていたら、昨年暮れにインタビューした俳優、三國連太郎さんの姿がふと頭に浮かんできました。旧制第7高等学校(鹿児島大学の前身)の青春を、反戦の願いをこめて描いた映画『北辰斜にさすところ』(神山征二郎監督、1月5日からテアトル梅田で公開)で主演を務め、そのキャンペーンで来阪されたのですが、とても84歳とは思えないほど、若々しく感じられました。それはきっと生涯現役をめざしておられるからでしょう。

 撮影時のエピソードや、映画の内容にからんで戦前から戦後の激動期におけるご自身の体験談をユーモアまじりで話されたあと、雑談になり、三國さんの口からこんな言葉が発せられました。

 「俳優という仕事は、社会に迎合した時点でおしまいなんです」

 ホーッ……。なかなか意味深なお言葉。常に反骨精神と何事にも媚びない勇気が必要なだという意味にぼくは理解しました。先の読めない時代にあって、それを実践するのはなかなか容易ではありません。さり気ないひと言だっただけに、すごく印象に残り、この役者さんはやっぱり只者ではないと実感しました。

Photo_15  三國さんといえば、今では『釣りバカ日誌』シリーズ(1988年~)の釣り好きの社長スーさん役で知られていますが、ぼくには、『飢餓海峡』(65年)や『神々の深き欲望』(68年)などで見せた、ひと癖もふた癖もある濃厚なキャラクターをまず思い浮かべます。どこをとっても社会に迎合した演技ではありませんでした。それでは、『釣りバカ日誌』はどうなんですか? ご本人いわく、「軽い喜劇であっても、そこに深いテーマが見えるので、出演しているんです」。

 この人の演技はいまでも進化しています。『北辰斜にさすところ』で演じた寡黙な老人からにじみ出る反戦の気概はすごい! 文句なく、日本映画界の名優だと言える三國連太郎さんは、ブランドそのもの。そこにいるだけで強烈な存在感を与えます。なにしろ、人を呑み込むような〈オーラ〉を身体中から発散しておられるのですから。こんなカッコいいお年寄りになりたいなぁ~。それがぼくの将来の目標です。

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