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2008年5月 2日 (金)

映画館文化へのエール

エッセイスト 武部好伸

 DVDやパソコンによって映画を家庭で観るのが当たり前になってきたけれど、映画はやはり映画館で観るべきものだとぼくは思っています。自称、映画館主義者です。Vシネマ以外、監督をはじめスタッフはみな、大きなスクリーンに自分たちの汗と涙の結晶が映し出されることを想定して作っているからです。だからこそ、映画の上映館にぼくは愛おしさを感じます。

 今日、その上映館のほとんどがシネコンですが、(基本的に)座席指定などなく、いつでも入退出できる劇場がぼくにとっては永遠の映画館なのです。そこには、垢抜けた若いスタッフばかりで、やけにオシャレなシネコンとはちがって、ひじょうに庶民的な空気が漂っています。映画って芸術的な側面がたしかにありますが、大衆娯楽の要素が強く、映画館にはそれが濃厚に宿っています。そしてなによりも映画が光輝を放っていた黄金時代を支えてきたのです。ぼくはそこに文化を感じます。映画館文化です。

Photo  そのもっとも映画館らしい映画館ともいえる千日前国際劇場が、3月末、62年の歴史に幕を降ろしました。大阪には、新世界や天六(天神橋筋6丁目)などにまだ従来の映画館が存続していますが、日本の映画興行発祥の地ミナミから映画館が消えてしまい、ほんとうに残念でなりません。この映画館は、ある意味、大阪の映画館文化のブランドだと思っていたからです。

 時代の流れとはいえ、シネコンばかりになってしまうと、どうも味気ない。1館で多数の作品を上映しているのはありがたいですが、没個性的というか、基本的にどこもよく似た雰囲気。そこが面白くないです。その点、千日前国際劇場にしろ、松竹座にしろ、OS劇場にしろ、かつて映画館は劇場ごとに独特な味を出していたと思います。

 古臭いとか、懐古趣味とかと言われようが、ぼくのように映画館を愛する人たちがまだまだ多くいます。ひょっとすると、シネコンだらけのなか、映画館がかえって注目されることもありうるかも。どう転ぶかわからないのが、世の常ですから。

Photo_2  千日前国際劇場の最終日、「さよなら上映」の石原裕次郎主演『狂った果実』(1956年)をひとりしんみりと観ながら、そんなことを考えていました。

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