大阪ブランド情報局

ベンチャー企業を支援

一柳良雄さん

 「買うて、試して、評価して」――大阪生まれのベンチャー企業支援組織が始めた大手企業とベンチャーを「マッチング」させる仕かけが全国に広がっている。
 この組織は「ベンチャーコミュニティー」。「大阪を元気にしよう」と、元通産官僚の一柳良雄さん(63)が99年に設立した。当初個人会員357人だったが、法人会員53社も加入、会員は500人を超すまでになった。
 04年から始めた「マッチング会」は、大手企業にベンチャー企業の製品や技術を試しに買ってもらい、2カ月後に評価して返す仕組み。優れた内容であれば両社は連携、改善点があればアドバイスする。これまでまとまった商談は15件、1億5千万円。関西の大手企業は30社、ベンチャー企業は累計82社がこの仕組みを活用したという。「ベンチャーの最大の課題は販路開拓。大手企業に新製品を持ち込んでも、すぐには評価してもらえない。そこで牧野明次・岩谷産業社長とこの仕組みを考えた」と一柳さん。政府、自治体などから注目され、「トライアル発注制度」として各都道府県などでも導入されるようになった。

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 「コミュニティー」では月に1回、ベンチャー経営者を講師に話してもらったり、課題別に分科会を持ったりしている。10周年を迎えたこの秋(09年)、若返りを図るため、一柳氏は代表を降りて特別顧問になった。
 一柳さんは東大阪育ち。通産省(現経済産業省)に入り資源エネルギー庁石油部長、総務審議官などを歴任。93年、近畿通産局長(近畿経産局長)も務めた。98年に退官して大阪でベンチャーコミュニティーを設立した。「同期は天下って行った。肩書きを持つとかっこいいが、天下り先では自分の考えと違っても自分を殺して生きて行かねばならない。退官後は、自分の想いに正直に生きていこうと思った」
 00年に設立した「一柳アソシエイツ」は来年10周年を迎える。官と民の橋渡しや経営コンサルタントが主な業務。去年5月には「一流塾」を設立して塾長に。若手、中堅経営者を育成するのが目的で、「売り手よし、買い手よし、世間よしの近江商人の三方よしの精神を叩き込む」
 著書に経営論や経営者との対談をまとめた『元気と知恵の経営』(産経新聞出版)などがある。BSフジで1月から、一柳さんがキャスターを務める新番組「ネクストウエーブ 一柳良雄の心粋」(毎週日曜)が始まる。
(文:七尾隆太 写真:ショーン・ケンジ・マドックス)

取材日:2009年11月29日
〔参考〕一柳アソシエイツ http://www.ichiryu.org/