大阪ブランド情報局

能の普及と伝承に努める

山本章弘さん

 「水都大阪2009」最終日の10月22日、新作能「水の輪」が、大阪・天満橋の八軒家浜に係留された船上を舞台に上演された。汚れた川が水鳥たちの努力で再生する物語。約45分。一般公募の子どもたち25人ほどが水鳥に扮して大阪弁で出演した。観世流能楽師、山本章弘さん(49)の作、演出、主演。現代アーティスト井上信太さんが舞台の松を制作した。古典芸能と現代アートのコラボレーションに約3000人が見入った。
 山本さんは、山本能楽堂(大阪市中央区)や野外で約2カ月間にわたって子どもたちの演技を指導、大阪の川をクルージングしながら大声を出して謡(うたい)のけいこもつけた。
 普段から、子どもたちへの能の普及活動には人一倍熱心。NPO法人大阪アーツアポリア代表理事、中西美穂さんの協力を得て取り組んでいる「能と遊ぼう!」(全10回)もその一つ。能楽堂を探検したり、小道具を工作したり、遊びながら能の世界に誘う。能の地謡を謡う子どもたちを募って「少年少女『羽衣』うたい隊」を結成して公演もした。能の主人公になりきって鑑賞する「アートによる能案内」も子供達に大人気だ。

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 一般向けの普及活動にも知恵を絞っている。5年前から山本能楽堂で開いている「とくい能」は、仕事帰りの人たちを対象とした夜の公演。愛称は能楽堂の地名、徳井町からとった。「まず、地元の人にかわいがってもらわないと」。山本さんの解説付きで、公演が終われば質問も受け付ける。公演を始めるのは午後7時ごろからだ。初心者向け体験講座「まっちゃまちサロン」は気軽な入門講座。ホテルロビー、駅ターミナルなどで舞い、通行人に目を向けさせることも年に数回ある。
 大阪市、大阪商工会議所との共催で月2回開いている「上方伝統芸能ナイト」は、大阪の文化力の向上と観光集客が目的。能だけでなく、狂言、文楽、上方舞、落語、講談、浪曲など上方伝統芸能の中から一晩で4種類の芸能のさわり部分が楽しめる趣向。女道楽、お座敷遊びといった芸能も選べる。
 山本さんは、亡父山本眞義氏に師事し、3歳で初舞台。関西大文学部を卒業後、故25世宗家、観世左近氏(東京)の下で5年半の内弟子生活の後独立。現在は26世宗家、観世清和氏に師事。重要無形文化財総合指定保持者。
 橋下徹大阪府知事、平松邦夫大阪市長にそれぞれ会う機会があったとき二つを要望したという。「一つは、定期的に古典芸能を鑑賞してほしい。二つ目は、謡の一節でもいいから謡えるようにしてほしい」と。
(文:七尾隆太 写真:ショーン・ケンジ・マドックス)

取材日:2009年11月2日

〔参考〕
 山本能楽堂 http://www.noh-theater.com/
 羊飼いプロジェクト(水の輪) http://www.grandsheep.com/
    上方伝統芸能ナイト http://kamigata-night.com/