大阪ブランド情報局

ロボット演劇を提案し実現

黒木一成さん

 出演者はタケオ、モモコと真山祐治、郁恵夫妻の4人。とはいえ、タケオとモモコはロボットである。大阪大学21世紀懐徳堂(大阪府豊中市)の多目的スタジオで去年末、世界で初めてというロボット演劇「働く私」が上演された。
 生身の2人は劇団「青年団」の俳優、ロボットは三菱重工業製のコミュニケーションロボット「wakamaru」(高さ1メートル)。脚本・演出は劇作家の平田オリザ・大阪大教授、技術指導はロボット研究の第一人者、石黒浩・大阪大大学院教授が担当、ソフトウエア開発会社イーガー(本社・大阪市)会長の黒木一成さん(48)がロボット側の監督・プロデューサーを務めた。

Kuroki1 Kuroki2

 働くために作られたのに働きたくないというロボットのタケオを通して、「働く」とは何かを考える会話劇。約27分。2体のロボットは器用に動き回り、手振りを交えながら会話する。
 07年に大阪大工学部の非常勤講師になった黒木さんが提案して実現した。「ロボットの機能、開発の現状を広く理解してもらうため、エンターテインメントに使ってみようと考えた」。2回の公演後に、観客に実施したアンケートでは、「ロボットに感情があるように見えた」などと好意的な反応が約80%あったという。黒木さんらはロボットを家電製品の一端と考え、ロボット技術を使いやすい家電に組み込むことを目標にしている。いずれ、開発が進む大阪・梅田北ヤードの一角に、ロボット演劇の常設舞台を設けて観光の目玉にしたい考えだ。
 「ロボットを親しみやすく」と、黒木さんらは「段ボールロボット」も開発している。高さ175センチ。首や手のひじが女性のようにしなやかに動く。外装は再生紙なので「環境にも優しい」という。動くマネキンとしてデパート向けなどに売り込む方針だ。
 高校卒業後、情報処理技術者の資格を取得して会社勤めのあと、25歳でソフトウエア会社を起業し、94年に現在の会社を創業して社長に。「ロボット技術の開発スピードが速いので専念しようと」06年に会長になり現場に復帰した。
 「大阪をロボット産業の集積拠点に」とのかけ声があちこちで聞かれるが、黒木さんは「産業用ロボットを別にして、サービス用ロボットはなかなかビジネスに結びつきにくいのが現状だ。開発投資がかかるので、資金面も含めた支援の仕組みづくりが急がれる」と話している。
(文:七尾隆太 写真:谷川瑠美)

取材日:2009年10月22日

〔参考〕
㈱イーガー http://www.eager.co.jp/