大阪ブランド情報局

西の丸庭園から文化イベントを発信

伊東雄三さん

  大阪城周辺に2009年夏、大勢の人たちが繰り出した。1カ月半、37ものイベントを連発した「大阪城サマーフェスティバル」。今年で4回目。中でも、西の丸庭園に初めて特設ステージを設けて野外プログラムを組んだ「西の丸庭園プロジェクト」が目を引いた。
 「世界にも誇れる西の丸庭園から、大阪城ブランドを発信したかった」と、このイベントをプロデュースした伊東雄三さん(62)。毎日放送ゼネラルプロデューサーで、大阪府立上方演芸資料館(ワッハ上方)館長でもある。 
 ステージでは、約1万5千個のあんどんの炎がゆらめく「大阪城城灯りの景」を背景に、大学生らの管楽演奏や少年少女合唱団のコーラス、信州上田市の「真田陣太鼓」。関西の俳優陣約80人が出演した野外劇「大坂夏の陣1615~城が燃えてもオレたちは!」は伊東さんのプロデュース。約1800人が芝生にすわって見入った。会期中、NHKの公開中継収録や大学生らの吹奏楽演奏も。
 去年までの5年間、大阪城一帯で展開した毎日放送のテレビ、ラジオ放送連動のイベント「オーサカキング」をプロデュースして来ただけに、こうした企画は手なれたもの。恒例の「大阪城薪能」」も合流、フィナーレを飾った。
 だが、伊東さんの心は晴れない。「ワッハ上方」の移転が迫られているからだ。

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毎日放送で主にテレビドラマを制作、松竹新喜劇などの舞台中継番組も数多く手がけたので、演芸界の人脈は広い。請われて07年4月館長に就任した。ところが、1年もたたない去年1月、橋下徹大阪府知事体制になって「全ての事業・出資法人及び公の施設をゼロベースで見直す。図書館以外の府立施設の廃止、売却を検討」発言。「まさかこんなことになるとは」
 西の丸庭園プロジェクトの準備に追われていた今年7月には、通天閣(大阪市浪速区)への縮小移転方針が示されたため、伊東さんは「規模縮小・経費削減しつつ現在地(同市中央区千日前)での存続がベスト」と防戦に躍起だ。
 「演芸資料の収集、展示に、実演が加わって初めて生きた資料館になる。レッスンルーム、小演芸場やホールがなくなれば、子どもから大人までが上方演芸を見て、聞いて、楽しむ機会がなくなる」
 「千人もの資料寄贈者の中には、移転するのなら資料を返してほしいと仰る方もいる」
 「在阪放送局から提供された約3000番組もの放送資料は大阪の貴重な文化財産。移転になると関係者の協力を得ることが難しく、散逸の危機に瀕してしまう」
 伊東さんはあちこちのシンポジウムで声を枯らし、関係者と知事あての要望書、意見書などを出すなど奔走して来た。来年2月府議会で決着する。現在地での存続を支持する輪は着実に広がっているが……。
(文:七尾隆太 写真:谷川瑠美)

取材日:2009年11月2日

〔参考〕ワッハ上方 http://www.wahha.or.jp/