大阪ブランド情報局

とんど祭りを〝日本一の屋台村〟に

中村重男さん

  「懐石料理 枡田」「日本橋 藤久」「居酒屋 ながほり」――大阪市内で営むこれらの料理店は10月、「ミシュランガイド京都・大阪2009」の一つ星に選ばれた。ミシュランによれば、一つ星は「そのカテゴリーで特においしい料理」を表す。
 実はこの3店、高津宮(大阪市中央区)で毎正月催される「とんど祭とたぶん(自称)日本一の屋台達」の常連である。1月12日に開かれた今年の屋台には、ホテルニューオータニ大阪のレストラン「サクラ」、フランス料理「ラ・トォルトゥーガ」などとともに18店が出店した。お代はほとんどワンコイン(500円)。有名店の料理を安く食べられる、とあってどの屋台にも列ができた。「たぶん日本一」と謙遜しているが、こんな豪華な屋台村は紛れもなくここだけだろう。
 屋台は、01年のスタート時から祭りのプロデュースをしている「ながほり」(大阪市中央区上町)の店主、中村重男さん(52)の知り合いばかりという。料理だけでなく、落語寄席、テノール、だんじり囃子、民謡などのライブもあり、境内は一日大にぎわい。出演者たちの大半は「ながほり」の常客だ。

Nakamura1 Nakamura2

 10年ほど前、高津宮の宮司から「参拝客が減って、寂れてしまった。何とか復興させたい」と相談を持ちかけられたのがきっかけ。「大阪を元気にしたい」と思っていた中村さんが、料理人らに声をかけて実現した。「お客も、出店を構える店主も、アーティストもこの日だけは活気いっぱい」。今では、高津宮の年中行事として定着した。評判を聞きつけて、中村さんに問い合わせが相次ぎ、各地で似たような屋台村イベントが広がってきた。
 大阪・十三生まれの中村さんは、中学を卒業して板前修業。「履歴書に書けないぐらい」の飲食店を〝包丁一本〟で転々とした。84年、27歳で市内中央区島之内に「ながほり」を開店。生産者の見える素材にこだわり続け、人気スポットになる。ところが、05年4月、JR福知山線事故で妻道子さん(当時40)を失う。息子の海里君(当時中学生)と2人残された。「店をやめようと思ったが、強く後押しをする人がいて、頑張り屋だった妻の分までやろうと思い直した」。08年6月、現在の場所に2階建てのビルを建てて新装開店。酒蔵の樽材、高津宮の石などを配した、しっとりとした雰囲気の店になった。
 このところ「ご恩送り」を考えている。「長く商売させてもらったのは先人たちの知恵、知識を学んで来たから。ノウハウを次の世代に伝えていかねばならない」。「サクラ」のシェフ、ドミニク・コルビさんと料理人を集めて勉強会を開いたりしている。
(文:七尾隆太 写真:谷川瑠美)

取材日:2009年11月18日