大阪ブランド情報局

幅広い素養がまちおこしに生きる

亀井哲夫さん

  「大阪城の濠に生息しているハゼ科のチチブは、ひょっとしたら秀吉時代からの生き残りかも知れない」――。〝淡水魚博士〟の異名をとる追手門学院教育参与、亀井哲夫さん(62)の話にはつい引き込まれてしまう。「城の濠は徳川方によって埋められたが、大川とつながっていた北側の一部は残った。川から入り込んだチチブが石垣のすき間を利用してしぶとく生き抜いたと考えられる」
 「都市の自然」をテーマに、大阪城公園内の自然と生き物について、去年まで3年がかりで調査した。追手門学院の発祥は大阪城のそば。去年、創立120周年を迎えたのを記念して取り組んだ「大阪城プロジェクト」で、座長を務めた亀井さんの担当は魚類。近畿大の協力も得て刺し網、はえ縄や地曳網も引くなど大がかりな調査をした結果、14種の魚の生息が確認された。この総合調査の成果は分厚い報告書にまとめたほか、『大阪城ネイチャーウオッチング』(朝日新聞出版)として出版した。亀井さんは「大阪城公園は人手が入り過ぎている。もっと自然のままを残すべきだ。湿地性植物のための池、鎮守の杜のような雑木林を設けたらどうか。秀吉時代にあったという『山里丸』を復元するのも一案だ。学院として大阪市に提案したい」。

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 大阪城の次に進めているのが「上町学プロジェクト」。十分には知られていない上町台地の歴史遺産や文化を再発見しようとのねらいで、こちらは関西経済同友会との連携作業だ。連続講座、史跡散歩などを開いている。亀井さん自身は「江戸時代、この地域に『浮瀬』『西照庵』『福屋』という高級料亭があった」と話し、食文化の魅力を調べてみたいという。
 大阪・住吉生まれ、追手門中学・高校の日本史の先生をしたあと、07年4月まで8年間、校長を勤めた。30代後半になって「雑魚」の魅力に取りつかれ、淡水魚の採取のため全国を飛び回るようになる。「日本在来種の魚は、地元の歴史を丸まる背負っている。地味な魚だが価値を知って、大事にしてほしい」。堺市内の自宅に91年、淡水魚の水族館を開設した。名前は「淡水魚ミュージアム茶論『雑魚寝館』」。現在、長さ1~3メートルもある水槽70余りに淡水魚約60種類、1000匹。金曜日の夜になると魚好きの仲間が集まって来る。
 歴史、魚、食、茶の文化など亀井さんの広範な素養は、まちづくりや活性化に引っ張りだこだ。数年前から関心を強めて調べているのはアオウナギ。「緑っぽい色のウナギで味は絶品だが、生息地が限られ謎だらけ」。ウナギについてのうんちくを来年6月、新書にまとめる。
(文:七尾隆太 写真:ショーン・ケンジ・マドックス)

取材日:2009年10月21日

〔参考〕
大阪城プロジェクトhttp://www.otemon.jp/120shunen/ojp/index.html