大阪ブランド情報局

名匠デュメイ氏を音楽監督に招く

西濱秀樹さん

  名匠オーギュスタン・デュメイ(60)が関西フィルハーモニー管弦楽団(大阪市)の音楽監督に――。統合論、行政の補助金カットなど暗い話題が覆う関西のクラシック界からこの秋、特大ニュースが世界に発信された。デュメイさんは、カラヤンに見出されたフランス出身の世界的バイオリニスト。指揮者としても活躍している。
 任期は11年から5年間。年間2、3カ月日本に滞在し、定期演奏会3回、東京公演で1回指揮・独奏するほか、アンサンブル指導や室内オーケストラの結成などの活動をする。デュメイさんは去年9月、関西フィルの首席客演指揮者に招かれている。
 楽団の生き残りを賭け、演奏力の質向上を目指していた西濱秀樹理事・事務局長(38)がデュメイさんに直談判した。06年に来阪したときだった。
 「我々のオーケストラは貧しい。だが、夢を持って活動したい。我々がかなえたい夢はあなたと契約することだ」
 デュメイさんは思わず、「イエス」。「彼は共演を通して関西フィルに好印象を持ち、可能性を感じていたようだ」と西濱さん。首席客演指揮者としての演奏会は絶賛され、団員にも計り知れない刺激になったという。
 西濱さんは5月、楽団の中期経営計画を携えて滞在先のブリュッセル(ベルギー)に飛び、音楽監督への就任を懇請した。デュメイさんは「私に求めるのは質の向上と世界への発信だろ」。たった3泊4日の滞在中に、名匠の音楽監督が誕生した。

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 西濱さんは中学生のころからのクラシックファン。関西学院大を卒業するまで「900回以上はコンサートを聴きに行った」。大学生のとき、関西フィルの定期会員になった。「親しみやすいオケだし、会費が安かったから」。
  関西フィルは95年、阪神大震災の影響で公演回数が激減、深刻な状況に陥る。この年の秋に開かれた、関西フィル主催の経営危機を訴えるシンポジウムに参加した。そこで聞いた声は「補助金がない、チケットが売れない、仕事がない」といった嘆きばかり。西濱さんは会場から、「ないものねだりばかりするオケを誰が応援するもんか。持ち味を生かして演奏に磨きをかけ、地域やファンとつながることが大切ではないのか」とぶった。後日、事務局から電話が入った。「関西フィルで働きませんか」
 事務局入りした西濱さんは数々のアイデアをひねり出す。地域密着路線を打ち出し、「まずは近隣の人たちに愛されるオケを」と、98年から年4回、港区弁天町の練習場で、コミュニティーコンサートを始めた。200席はいつも完売だ。滋賀、兵庫、和歌山など関西一円での演奏会や地元小学校でのワークショップも広げている。「大阪に拠点を置きながらも広域活動を」とのねらいだ。いずみホール(中央区)の主催演奏会では今夏、無料託児サービスも始めて話題を呼んだ。
 年間約120回の本番にはほぼ毎回、会場に足を運ぶ。このうち、50回ほどは司会やプレトークも務める。「私は工事現場のおっさん。メンバーの悩みも聞いて質の向上へ厳しい指導もする。いずれ、デュメイさんとともに欧州への演奏旅行を実現したい」。
(文:七尾隆太 写真:谷川瑠美)

取材日:2009年10月7日

〔参考〕
 関西フィルハーモニー管弦楽団 http://www.kansaiphil.jp/