大阪ブランド情報局

現代美術展の〝出前屋〟

加藤義夫さん

 大阪・中之島にほど近いホテルの客室がこの夏の3日間、現代美術ギャラリーに変身した。8階から11階までの47室に、絵画、彫刻、写真、オブジェなどの作品が、壁だけでなくベッドや調度品なども使って展示された。現代美術の見本市「ART OSAKA(アート大阪)2009」で今年が7回目。全国主要都市のギャラリーのほか、韓国、台湾からの参加もあった。4回目から企画プロデユーサーをしている加藤義夫さん(54)は「ホテルの客室は、自宅と同じような生活空間の中で現代アートを感じてもらうのに打ってつけ」と話す。現代美術に特化したアートフェアは西日本ではここだけとあって、会期中に全国から約3千人が訪れた。
 加藤さんは3つの顔を持つ。一つが、展覧会を企画から実行までプロデュースする「キュレーター」。「現代美術展を出前する展覧会屋」を自任する。美術館などに属さないフリーランスなので「インディペンデント・キュレーター」を名乗り、「全国に10人いるかいないか」という。大阪で開かれる現代美術展にはおおむね、加藤さんがかかわっているといっていい。イタリア、ドイツ、韓国など海外展もプロデュースした。二つ目が美術評論家。04年から月2回、朝日新聞文化面の美術評論を担当しているのをはじめ、美術誌、展覧会カタログなど幅広く執筆活動をしている。三つ目が大学教員。武蔵野美術大、大阪成蹊大など3大学で非常勤講師として「アート・マネジメント論」などを講義している。

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 若いころ画家を志したが、「絵だけで生計を立てるのは難しい」のでグラフィックデザイナーになり約10年。86年に大阪市内の画廊から誘われて、展覧会の企画運営の仕事をするようになって絵を描くことはやめた。97年、画廊の解散をきっかけに独立、「加藤義夫芸術計画室」(大阪市旭区)を設立して代表になった。水都大阪アートアドバイザーの1人でもある。
 「アート大阪2009」開催初日の8月21日、大阪市港区のサントリーミュージアム〔天保山〕が10年末で休館する、との発表があった。加藤さんは、朝日新聞夕刊(8月27日付)に「関西の芸術文化にとって大きな損失」と無念の思いをつづり、「このままでいくと大阪は、美術館不毛地帯と言われても反論できないだろう。大阪の文化度の低さは大阪府と市の文化行政や政策に問題があると考えるのは私だけだろうか」と結んだ。
 兵庫県には美術館が17館あるのに、大阪府内には8館、府立美術館がないのは全国でも大阪だけ。民間企業が公的施設の肩代わりをしてきた格好だが、その民間施設の撤退が相次いでいることに、加藤さんは危機感を募らせる。「都市は経済・政治・文化の三位一体で成り立っている。文化をはずしたら、都市としての魅力もあったものでない」
(文:七尾隆太 写真:仲田千穂)
                     

取材日:2009年9月3日

〔参考〕
ART OSAKA 2009  http://www.artosaka.jp/2009/whatsnew.html