大阪ブランド情報局

規格外の魚を産地から消費地へ直送

西川益通さん

 「すそもん」。量がまとまらない、規格外の魚を業界ではこう呼ぶという。通常の流通ルートには乗りにくい、こうした魚に目をつけ、漁業者と消費地を直結する流通事業を展開しているのが、株式会社 旬材(本社・大阪府吹田市)の西川益通社長(61)。目新しいビジネスモデルが注目され、テレビ、新聞、講演会、と引っ張りだこだ。

 Nisikawa_dsc_2089_2 Nisikawa_dsc_2079

 流通業界は、鮮魚にも安定品質、安定供給、安定価格を求めがち。ところが「とれる魚は多品種少量で、半分は『すそもん』。売れないから漁師の収益にもならない」と西川さん。「旬材」は全国30カ所余りの漁業者から、そんな魚の水揚げ情報をじかに入手、飲食店、量販店など240社余りの得意先に届けている。生産者から直接買い付けるから割安だ。
 規格はずれだった土佐清水(高知県)のハモは息を吹き返した。形が大きすぎて敬遠され、漁さえすたれていたが、西川さんは洋食素材の逸品と売り込んだ。商品名は「足摺 四万十の鱧(ハモ)」。漁業者を元気づけている。
 西川さんはヤンマーディーゼルのグループ会社で25年間、漁船を造って全国に売った。その数ざっと13万隻。各地に漁師の人脈ができ、魚の知識も玄人はだしに。しかし、わが国の漁業は衰退していく。漁獲量の減少、魚価の低下、後継者難、漁師の高齢化……。
 02年、西川さんは55歳で会社を辞め、元同僚4人と旬材を創業した。「漁業者を海に戻したい」。こんな気持ちがあった。 
 しわがれ声で、「いつでも、どこでも、何でも、欲しいだけ手に入るような事業はしない。当社はニッチ(すき間)な魚を扱う」。世の中が向かう「ユビキタス社会」と相反するような言い方だが、アイデアはすこぶる先端的。インターネットで漁業者と量販店などを結び、直接受発注できる新水産物流通システムに新たに挑戦し始めた。国土交通省始め国も後押しし、航空会社、通信大手、宅配業者などの協力体制も整った。話を聞きつけた香港、上海、シンガポールなど近隣諸国からも引き合いが相次いでいる。
 偽装相次ぐ食品業界に対しては、「流通が複雑になればなるほど偽装が起きやすい。しがらみのない外部のアイデアも入れて、できるだけシンプルにすべきだ」。
(文:七尾隆太 写真:仲田千穂)

取材日:2008年3月21日

[参考]
株式会社旬材 http://www.syunzai.com/