初春大歌舞伎のみどころ解説
大阪松竹座では、初春大歌舞伎開催中(~26日)です。
1/7の「上方文化再生フォーラム」にて、演劇評論家・中村義裕(なかむら・よしひろ)氏から、歌舞伎初心者にも大変わかりやすい解説と豆知識を聞くことができました。
<初春大歌舞伎・昼の部>について
1.葛の葉(くずのは)
葛の葉姫に姿を変えた狐が人間と夫婦になり子どもをもうけますが、狐であることがバレてしまい信田の森へ去って行く物語。20秒の早替り、80mの宙乗り、泣く子をあやしながら障子に「恋しくば尋ねきてみよ和泉なる信田の森の恨み葛の葉」という歌を、裏文字や口に筆をくわえての「曲書き」など見どころ満載とのことです。
※豆知識
このように人間と違った種類の存在(この場合は狐)と人間が結婚する説話を「異類婚姻譚(いるいこんいんたん)」と言い、美女と野獣(フランス)、白蛇伝(中国)などのほか、グリム童話などにも多く見られる民俗説話のことをさします。
2.佐々木高綱(ささきたかつな)
片岡我當(かたおか・がとう)さんが主役を演じます。岡本綺堂(おかもと・きどう)の作品で、新劇のリアリズムを取り込んだために音楽は一切なくセリフのみとなっています。
※豆知識
歌舞伎に登場する馬、人間2人で馬に乗る役者を支えます。鎧など衣装をつけると80kgを越えることもあるとか。歌舞伎俳優には身分制度があり、「名題(なだい)」と「名題下」に分けられます。年1回のペーパーテストと実技テストにパスした上で、各関係方面の賛同を得て昇進するのだそうです。馬の脚をつとめるのは「名題下」の役者さんです。
3.芋掘長者(いもほりちょうじゃ)
岡村柿紅(おかむら・しこう)作の舞踊劇。昭和35年に尾上松禄(おのえ・しょうろく)が演じて以来あまり上演されていませんでしたが、3年前に中村橋之助(なかむら・はしのすけ)が好演し、再びよく演じられるようになったそうです。
4.沼津(ぬまづ)
伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)の一つで仇討ちを題材にした作品。我當さんが平作を演じます。
※豆知識
江戸時代には奇数が陽のイメージとされたため、歌舞伎のタイトルは奇数になっています。仮名手本忠臣蔵(7文字)、義経千本桜(5文字)、東海道四谷怪談(7文字)など、無理やり奇数にするために難しい読み方になっているものもあるそうです。
何故奇数なのか。
1/1(元旦)、3/3(桃の節句)、5/5(端午の節句)、7/7(七夕)、9/9(重陽の節句)など、おめでたい日が奇数だったことに由来するようです。
いかがですか?
少々敷居の高い気がする伝統芸能も、ちょっとした豆知識で身近に感じられるといいのですが。
※インタビューの様子はこちら
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