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2023年3月 3日 (金)

【リポート】日本の文化に親しむ「花の集い」

日本の文化に親しむ「花の集い」開催

上方文化芸能運営委員会40周年&ファイナル

2月8日/国立文楽劇場(大阪市中央区)

 

日本の伝統文化芸能の振興や伝承者の育成を趣旨に、公演や機関誌の発行など様々な活動をしている関西・大阪21世紀協会上方文化芸能運営委員会は、このほど大阪市中央区日本橋の国立文楽劇場で「日本の文化に親しむ『花の集い』」を開催しました。

今回は、松本幸四郎さん、尾上右近さん、山村光さんを始め、人気の歌舞伎俳優、日本舞踊家が相集い、藤間勘十郎さんの構成・振付により、絢爛豪華でありながら親しみやすい歌舞伎と日本舞踊を3部構成で演じました。

第1部は京都祇園甲部芸妓たちによる手打「七福神と花づくし」です。
1_20230303102601 揃いの黒紋付を着た10人の芸妓さんたちが、拍子木を独特のリズムで打ち鳴らしながら花道を舞台へと進みます。凛とした空気の中で芸妓さんたちが演じるめでたい唄とお囃子に、観客は一気に惹き込まれていきました。
「手打」は江戸時代、役者の出演に手を打つ、つまり契約の証しとして始まり、一方で役者が芝居小屋に入る際、馴染み客が声援を送るためにも行われたそうです。

2_20230303095401 第2部の長唄囃子連中「高杯」は、1933年が初演の少しユーモラスな歌舞伎の演目。
松本幸四郎さん演じる次郎冠者が主人と花見に出かけ、「高杯」を買ってくるよう言われますが、中村歌之助さん演じる商人にだまされて高下駄を買わされます。酒に酔った次郎冠者がその高下駄を履いて陽気に踊る場面はタップダンスの技法を取り入れ、滑稽でもあり芸の深さを感じさせるものでした。

第3部は「極付・歌舞伎絵巻」と題し、市川九團次さんの口上に始まり、優雅で美しい舞踊が続きます。
最初は、能や文楽でもよく舞われる『三番叟』。渡邊愛子さんと藤間勘十郎さんが五穀豊穣を願い軽快な踊りを披露しました。
続くは『阿国歌舞伎』。いわずと知れた歌舞伎の創始者・出雲阿国が始めた踊りです。坂東はつ花さん演じる阿国と、柔らかな風合いの衣をまとった女性たちが優雅に舞い踊ります。
最後は山村光さんの『雪』。しっとりした踊りに会場は静まり返り、気品に溢れた日本舞踊の粋を味わっているかのようでした。
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締めくくりは歌舞伎の新作『蜘蛛の糸』で、能の「土蜘蛛」と同様、狂言師に化けた蜘蛛の精が蜘蛛の化身とともに現れ、源頼光を殺そうとする物語です。
松本幸四郎さん演ずる蜘蛛の精が3つの表情の違う面で早変わりして会場を沸かせ、蜘蛛の糸を何度もバッと投げかけるシーンも迫力に満ちています。恐ろしいストーリーではありますが、幸四郎さんの早変わりや、最後に登場した尾上右近さんの平井保昌の洒落た台詞に、大きな笑いと拍手が巻き起こりました。
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さて、上方文化芸能運営委員会は前身の上方文化芸能協会から日本の伝統芸能の振興と発信に力を注ぎ、今年で40周年を迎えました。しかし同時に、今年度をもって活動に終止符を打つこととなりました。尾上右近さん、市川九團次さんそれぞれの「40周年でファイナル」という挨拶に、お客様の間から残念そうなため息が漏れていました。

帰り際、外国人のお客様が「本当に美しく、日本の文化を全身で感じることができた。自国の人たちにも日本の良さをなんとか知らせたい」と、目を輝かせて感想を述べていました。
最後の公演は委員会の有終の美を飾るに相応しい充実した舞台となり、出演者、お客様、主催者、そしてこれまで活動を支えてきてくださったすべての人たちの胸に深く刻まれたことでしょう。

■主催:(公財)関西・大阪21世紀協会 上方文化芸能運営委員会
■協力:松竹(株)

 

【川嶋みほ子】

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