【リポート】ワンコイン文楽2024・公演直前ミニレクチャー
そうだ、文楽に行こう!! ワンコイン文楽
サントリーホールディングス協賛
2024年11月/2025年1月(うち16日間)
大阪市中央区・国立文楽劇場
大阪発祥の伝統芸能である人形浄瑠璃文楽の伝統を次世代に継承していくことを目的に、2014年度から始まった「ワンコイン文楽」が、本年度も好評開催中です。
この事業は、若い人たちも気軽に伝統芸能に触れられるよう、500円で国立文楽劇場の文楽本公演を鑑賞できる取り組み。関西・大阪21世紀協会のアーツサポート関西「京阪神ビルディング文楽支援寄金」により創設され、その後も2年ずつ京阪神ビルディング、岩谷産業、丸一鋼管、コクヨへと寄付のバトンが引き継がれてきました(2020~21年度はコロナ禍で休止)。
そして2024~25年度は、サントリーホールディングスの支援、当協会の協力で実施されています。
※実施概要は既報
https://osaka21-blog.cocolog-nifty.com/bunkaryokunews/2024/10/post-9e8cc2.html

ワンコイン文楽の目玉の1つは、出番を控えた技芸員(※)たちが公演直前の約30分間、文楽の基礎知識や魅力をわかりやすく解説してくれる「直前ミニレクチャー」です。 この日の講師は『仮名手本忠臣蔵』七段目「祇園一力茶屋の段」で、遊女おかるの人形を遣う吉田一輔(よしだいちすけ)さんが務めます。「江戸時代に大阪で生まれた文楽は、歌舞伎、能とともに日本3大古典芸能の1つで、ユネスコ世界文化遺産に指定されている。現在、一般社団法人 人形浄瑠璃文楽座に所属する我々約80名の技芸員かその伝統を引き継いでいる」。定員一杯の約30名の参加者たちは、たちまち話に惹き込まれていきます。
※技芸員の皆さん ⇒ 太夫/三味線/人形遣い
作家の近松門左衛門と語りの竹本義太夫の活躍によって文楽が大人気となり、ストーリーが複雑化したことに伴い、人形も人間の内面を描写するために工夫され、最初の1人遣いから、首(かしら)と右手の主遣い、左遣い、そして足遣いが操る現在の3人遣いとなります。そして、人形と太夫の語り、三味線の演奏が三位一体となって発展していきます。
一輔さんは、ヘチマや竹でできた人形の胴部分、檜でできた首の内部やそのほかの仕掛けや動かし方などを参加者にじっくり見せた上で、最も難しいのは3人が息を合わせることだと話します。主遣いが出すサインに瞬時に反応してあとの2人が動かなければ、人形は自然な動きにならないということです。
ここで左遣いの吉田簑悠(よしだみのひさ)さん、足遣いの桐竹勘昇(きりたけかんしょう)さんが加わり、実際の人形で、笑い、悲しみ、恨み、恥ずかしさなど様々な喜怒哀楽の動きを見せてくれます。でも、一人前の人形遣いになるには、足遣い(あしづかい)で10~15年、左遣い(ひだりづかい)で10~15年、合わせて30年もの修行が必要だそうです。一方、「左遣いは離れた位置から指金(さしがね)と呼ばれる棒で左手を操ることから転じて、裏で指示する人を指金と呼ぶようになった」という豆知識も教えてくれました。

今回、一輔さん「推し」の見どころは、ズバリ「おかる」だといいます。おかるは元々は腰元で、恋人が浪人になったため女主人の実家へ移り、最後には祇園一力茶屋に身売りします。「遊女おかるの色気、酒に酔った様子、梯子を降りるときのスリルなど、人形ならではの動きと太夫の語り、三味線の見せ場をぜひ楽しんでほしい」。
随所にユーモアを交えた丁寧でわかりやすいレクチャーは、参加者全員が楽しみ、直後の文楽鑑賞に大いに役立ったことと思います。
※ワンコイン文楽は、近畿在住・在勤・在学の15歳~35歳の方、または近畿圏にある大学や専門学校に通っている学生が対象で、これまで8年間に4,000人以上が参加しています。
※ワンコイン文楽2024の詳細はこちら
※一般社団法人 人形浄瑠璃文楽座についてはこちら
| 固定リンク