
令和元年度 大阪文化祭賞 受賞者が決定
文化祭賞3件、奨励賞5件
2020年3月4日発表(贈呈式は開催せず)
世界中が恐ろしい災厄に見舞われ、不安で不便な日々が続いております。
皆さまがご安全・ご健康にお過ごしでありますよう、心からお祈り申しあげます。
関西・大阪21世紀協会でも、この2月以降、主催・共催の事業は中止または形を変えての開催となっております。今回はその中から、「令和元年度 大阪文化祭賞」についてご紹介させていただきます。
■令和元年度「大阪文化祭賞」の受賞者が決定しました
当協会と大阪府・大阪市は、芸術文化活動の奨励と普及、大阪の文化振興の機運の醸成を目的に、大阪府内で上演された公演の中で優れた成果をあげたものに対して「大阪文化祭賞」を贈呈しています。
この賞は昭和38年に創設され、これまで多くの芸術家、実演家が受賞しています。関西の著名な芸術家・文化人・ジャーナリストが、第1部門「伝統芸能・邦舞・邦楽」、第2部門「現代演劇・大衆芸能」、第3部門「洋舞・洋楽」について公演を審査し、賞を選考します。
56回目となる今回は、令和元年に開催された公演の中から、以下の各賞が決定しました。
【大阪文化祭賞】3件
・仮名手本忠臣蔵 九段目 山科閑居の段 出演者ご一同 「11月文楽公演」の成果
・南河内万歳一座 「~21世紀様行~唇に聴いてみる」の舞台成果
・K★バレエスタジオ 「33回メモリアルコンサート」の成果
【大阪文化祭奨励賞】5件
・山村若・山村侃 「新進と花形による舞踊・邦楽鑑賞会『竹生島』」の成果
・尺八古典本曲断片ご一同 「尺八古典本曲断片 其の玖 三谷・菅垣 弐」の成果
・五代目 旭堂小南陵 連続講談千鳥亭における「妲妃のお百」の舞台成果
・古瀬まきを 「古瀬まきを ソプラノリサイタル~La voix humaine~」の成果
・アンサンブル九条山 アンサンブル九条山コンサート vol.7「セレクションズ」の成果
各受賞者の受賞理由・略歴(抜粋)は以下の通りです。
◎大阪文化祭賞 (第1部門:伝統芸能・邦舞・邦楽)
仮名手本忠臣蔵 九段目 山科閑居の段 出演者ご一同
「11月文楽公演」の成果

〈受賞理由〉
国立文楽劇場文楽公演は、今年度3回に分けて「仮名手本忠臣蔵」の通しを上演。文楽の物語性に興味を与え、従来なじみの少なかった観客を含めて大入りとなり、大成功を得た。企画の勝利ともいえるが、それをみごとに演じ切った技芸員の努力が称えられる。
〈略歴〉
人形浄瑠璃文楽座は、江戸時代に竹本義太夫が大坂で創設した竹本座が発祥で、その後いくつもの後継一座が盛衰を繰り返した末、唯一残った「文楽座」の流れを汲む団体である。座員は現在、太夫19名、三味線21名、人形42名、計82名で構成され、全員が公益財団法人文楽協会と契約を結び、文楽協会主催の公演の他、日本芸術文化振興会主催の大阪・東京の公演に参加し、文楽の継承・普及に努めている。昭和30年 国の重要無形文化財に指定。ユネスコにより、平成15年「人類の口承及び無形遺産に関する傑作」として宣言。平成20年「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に記載。
◎大阪文化祭賞(第2部門:現代演劇・大衆芸能)
南河内万歳一座
「~21世紀様行~唇に聴いてみる」の舞台成果
©谷古宇正彦
〈受賞理由〉
俳優の身体と装置を駆使し、六畳の部屋を西部劇の荒野や学校の運動場に一変させる演出はダイナミック。旗揚げ以来、一貫して大阪を拠点に全国にその名を知らしめ、関西小劇場界を牽引してきた底力と、若い才能や演劇ファンを育ててきた功績が称えられる。
〈略歴〉
昭和55年10月、大阪芸術大学(舞台芸術学科)の有志により結成。『蛇姫様』(作・唐十郎)で旗揚げ公演を行い、第2回公演以降は、座長・内藤裕敬のオリジナル作品を上演している。大阪を拠点に大阪、名古屋、東京の3都市公演を実施。韓国公演、中国公演や、複数劇団を集めが野外合同テント公演などを行い、関西小劇場を代表する劇団として、関西演劇シーンを牽引してきた。すべてが東京一極集中の中、大阪の地で「劇団」にこだわって活動し、今年、劇団創立40周年を迎えた。第65回文化庁芸術祭・優秀賞受賞(平成22年度「ラブレター」作・演出 内藤裕敬)
◎大阪文化祭賞(第3部門:洋舞・洋楽)
K★バレエスタジオ
「33回メモリアルコンサート」の成果
©岡村昌夫(テス大阪)
〈受賞理由〉
多くの優秀なダンサーを育てた指導者で振付家、そして素晴らしいダンサーだった矢上恵子(2019年3月他界)の追悼コンサート。観客はスピード感あふれるダンスの迫力に圧倒されながら、心に訴えかけてくる何かを感じる。矢上は大阪が生んだ偉大な舞踊家であることをあらためて確信させる公演だった。
〈略歴〉
貝谷八百子バレエ団を経た矢上香織・久留美・恵子の3姉妹で1983年に設立。88年、コンテンポラリーの振付家である恵子を中心としたK★CHAMBER COMPANYを結成。東京・韓国等でも上演を続けバニョレ国際振付賞推薦会にも出展。ヴァルナやローザンヌ等の国際コンクールでも恵子の作品が多数踊られ、数多くの受賞者を輩出。3姉妹が育てたスタジオ出身者には山本隆之(紫綬褒章受章)や新国立劇場バレエ団の福岡雄大、福田圭吾・紘也を始めとする数々のダンサーがおり、各バレエ団で活躍している。K★BALLET STUDIO CONCERTの開催は‘86年より毎年続けている。
◎大阪文化祭奨励賞(第1部門:伝統芸能・邦舞・邦楽)
山村若・山村侃
新進と花形による舞踊・邦楽鑑賞会「竹生島」の成果
©国立文楽劇場
〈受賞理由〉
国立文楽劇場の「新進と花形による舞踊・邦楽鑑賞会」で地歌舞「竹生島」を披露、端正で折り目正しい所作に品格を醸し出し、二人立ちの舞踊のおもしろさを見せてくれた。将来性を感じさせ、大阪の文化を担う上方舞山村流の次代を背負って立つ逸材である。
〈略歴〉
・山村若(やまむら わか):山村流宗家の長男として生まれる。平成5年7月、父の六世宗家山村若襲名披露舞踊会にて初舞台。平成26年父の三代目 山村友五郎襲名と共に、四代目山村若を襲名し宗家嗣となる。同年、3日間に亘り襲名披露舞扇会を開催。
・山村侃(やまむら かん)
山村流宗家の次男。父の六世宗家山村若襲名披露舞踊会にて初舞台。平成26年に若を継いだ兄と共に、大阪発祥の日本舞踊上方舞山村流を次代に繋げる為に力を尽くしている。山村流宗家一門の会『舞扇会』に毎年出演する他、後見等を務め修行を続けている。
◎大阪文化祭奨励賞(第1部門:伝統芸能・邦舞・邦楽)
尺八古典本曲断片ご一同
「尺八古典本曲断片 其の玖 三谷・菅垣 弐」の成果

〈受賞理由〉
関西在住の川崎貴久、小林鈴純、谷保範、國見政之輔の4人が流派をこえ集う演奏会。充実した演奏はもちろん、研究・解釈面にもじっくり取り組んでいることは聴く側にも意義深い。大阪を舞台に四者四様の個性豊かな演奏で活動を続ける「断片」の更なる飛躍を期待。
〈略歴〉
会派を異にする四人の尺八家、國見政之輔・谷保範・小林鈴純・川崎貴久で結成。全国各地に伝わった虚無僧の音曲「尺八本曲」について、演奏会毎に曲種などのテーマを定めている。平山泉心の司会にて各奏者の伝承経路の違いを大切にしながら「わかりやすく」を心掛け、解説と共に演奏を続けている。
◎大阪文化祭奨励賞(第2部門:現代演劇・大衆芸能)
五代目 旭堂小南陵
連続講談千鳥亭における「妲妃のお百」の舞台成果

〈受賞理由〉
五代目旭堂小南陵が旭堂南龍と「此花千鳥亭」で7日間連続の「続き読み」の会を開催。「講談師の拠点を」と小南陵が尽力し、平成31年1月、講談の拠点となる場所として大阪市此花区に「此花 千鳥亭」をDIYでオープンさせたことで、講談会・落語会も大幅に増え、挑戦の幅も広がった。演芸界への功績もあわせて評価。
〈略歴〉
OL・俳優を経て平成13年7月、旭堂小南陵(現・四代目 旭堂南陵)に入門。古典講談はもちろん、新作創作講談にも精力的に挑み、平成27年 第70回 文化庁芸術祭新人賞受賞。平成28年 八尾市文化新人賞受賞、五代目 旭堂小南陵を襲名。
◎大阪文化祭奨励賞(第3部門:洋舞・洋楽)
古瀬まきを
「古瀬まきを ソプラノリサイタル~La voix humaine~」の成果
©Takashi Matsuura
〈受賞理由〉
プーランクの「人間の声」を中心としたリサイタルにおいて優れた歌唱と演技で観客を魅了した。難解な音型を歌いこなし、発音も的確。ホールの響きを生かした発声も優れていた。演技でも、聴衆を緊迫する物語の世界に引き込んだ。ピアニスト遠藤玲子の演奏も、歌と見事に協働していた。今後のさらに充実した活動に期待を込め、顕彰する。
〈略歴〉
相愛大学卒業、京都市立芸術大学大学院修了。平成25年度文化庁新進芸術家海外研修員。第15回松方ホール音楽賞、平成25年度奏楽堂日本歌曲コンクール第1位ほか多数。平成28年度尼崎市民芸術奨励賞。第40回音楽クリティック・クラブ賞奨励賞
◎大阪文化祭奨励賞(第3部門:洋舞・洋楽)
アンサンブル九条山
アンサンブル九条山コンサート vol.7 「セレクションズ」の成果

〈受賞理由〉
2010年の設立以降、大家から若手に至るまで多様な現代音楽作品を紹介してきた。本公演はその集大成として、これまで演奏した中から6曲を厳選。徹底した演奏解釈と高度な技術、豊かな音楽性に加え、工夫を凝らした演目内容で多くの人々に現代音楽の魅力を伝えた。
〈略歴〉
2010年ヴィラ九条山レジデント作曲家により結成。2015年以来、演奏家自身による企画を展開する現代音楽アンサンブル。国内外でキャリアを積み、ソリストとしても活動する現代音楽のスペシャリスト達で構成。2019 年音楽クリティック・クラブ賞奨励賞受賞。
なお、副賞賞金として、大阪文化祭賞20万円、奨励賞5万円がそれぞれ贈られました。
それでは皆様、引き続きお身体を大切に、ご安全にお過ごしください。
【川嶋みほ子】