大阪ブランド情報局

「顔の見える関係」を仕掛ける

堂野智史さん

 

  デジタル化が進んだら、クリエイターの仕事の工程は統合され、連絡も電子メール一本に。いきおい仕事場にこもりがち――。こんな状況を打ち破ろうと、「扇町インキュベーションプラザ(メビック扇町)」(大阪市北区)の堂野智史所長(47)は、「顔の見える関係づくり」をキーワードに「扇町クリエイティブクラスター活動」に取り組んでいる。
 調べてみたら、北区東部地域にはIT(情報技術)、広告、デザイン、印刷などクリエイティブ関連の会社が約2千社もあった。それらの会社で話を聞いた結果、導き出したのがこの活動だ。現在、ホームページには270社が掲載されている。クリエイター約10人ずつが集まって本音で語り合うミーティングは、4年目のこれまで三十数回を数えた。商談や連携した例も少なくないという。「人と人とのつながり」をテーマに、「この街のクリエイター博覧会」、愛称「このクリ博」を開いて来た。第4回の今年は12月5日までの約60日間、自己発信、ネットワークづくり、自己研鑽を合言葉に40団体が出展、交流した。
 「メビック扇町」のもう一つの役割が、創業間もない企業を手助けする「インキュベーション」(孵化=ふか)機能。3人のスタッフが随時、相談や助言活動をして来た。入所は最長3年間。これまで約120社が退所した。平均は1年11カ月。堂野さんは「売り上げが伸びていなくても、自立して人として成長した姿を見るのはうれしい」
 シンクタンクの日本システム開発研究所大阪事務所で14年間、地域の産業振興の構想づくりをしていたが、現場で実践してみたいと思い、03年に扇町メビックに移る。

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 私的に取り組んでいるのが産学官民の交流組織「関西ネットワークシステム」(KNS)の活動。所属や立場の違う人たちが肩書きや年齢を超えて自由に交流している「岩手ネットワークシステム」(INS)を知って感動、大阪にもつくろうと考えた。INSとの交流を続けながら、03年に有志らと発足。現在、会員249人。年4回の定例会、産業クラスター、まちづくりなど7テーマの研究会などを続けている。「KNSが声をかけると全国から人が集まって来るようになった。大阪も閉鎖性を破って、全国から好かれる地域にできたら」と意気込む。INSとの交流が縁で「いわて文化大使」に任命された。
 ダイエットに挑戦、食事の改善で07年春に78キロあった体重が一時64キロまで減量、今68キロ。メビック扇町が入居している大阪市水道局庁舎が解体されるのに伴い、来年3月で閉館される方針だ。移転先は決まっておらず、堂野さんのやせる思いは続く。
(文:七尾隆太 写真:仲田千穂)
取材日:2009年11月11日

〔参考〕
 扇町インキュベーションプラザ  http://www.mebic.com/
 関西ネットワークシステム http://www.kns.gr.jp/