大阪ブランド情報局

「ミナミホイール」を仕切る

内田幸児さん

 「ミナホ」。秋の大阪ミナミの音楽イベント「MINAMI WHEEL(ミナミホイール)」は愛称で呼ばれるようになった。今回(09年)で11年目。10月30日から3日間、全国約360組の新人、中堅のアーティストたちが、ライブハウスやクラブなど20会場で、さまざまなジャンルの音楽をライブ演奏、延べ1万5000人が楽しんだ。
 主催は大阪のラジオ局「FM802」。放送局のブランド向上とリスナーとのコミュニケーションを図ろうと、99年から始めた。第1回からスタッフとしてかかわり、現在、総括責任者の事業開発部課長、内田幸児さん(38)は「言ってみれば、アーティストたちの見本市。これからの活動のお披露目の場といっていい」。チケットは1日券、3日券の全会場通し券だけ。自分の好きなミュージシャンの演奏をはしごできるのが特徴だ。

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 米テキサス州の州都オースティンで開かれている音楽祭「サウス・バイ・サウス・ウエスト」がモデル。内田さんは03年に研修で初めて見学、「あまりにも面白かったので」翌年は休暇をとって自費で渡米した。本場の音楽祭について「ライブハウスが軒を連ね、音楽が生活に溶け込んでいる感じ。目抜き通りは歩行者天国となり、京都の祇園祭のように老若男女であふれかえっていた」
 「ミナホ」が順調に運んだわけではない。「1回目は完全に失敗だった」。13会場の観客数が3日間合わせてたったの800人。200人収容の会場に入場者は2人だけといったことも。「その当時は、無名のミュージシャンにカネを払って聴きに行くという習慣がなかったから」。その後、有名アーティストも招くなど工夫、次第に客も増えていく。キャッチフレーズは「あなたにとって一番の音楽を聴きませんか」。この種のイベントの先駆けとして定着し、各地に広がっている。
 内田さんは京都生まれ。174センチ、82キロ。同志社中学から大学までラグビー部で、大学時代はフルバック。現在も「六甲ラグビーフットボールクラブ」に所属、ラグビーを続けている。「音楽も好きだったので、音楽が仕事にできるなら、と就職情報誌で見てFM802を受けた」という。
 「ミナホ」のこれからは「商店街や飲食店などと組んで、チケットに割引クーポンの特典をつけるといった、地元とのつながりを強めてまち全体の祭りにしていきたい」。年明けには12回目の準備が始まる。
(文:七尾隆太 写真:ショーン・ケンジ・マドックス)

取材日:2009年11月25日

〔参考〕
FM802  http://www.funky802.com/