大阪ブランド情報局

「應典院」を拠点に社会貢献活動

山口洋典さん

 大阪・天王寺の浄土宗應典院主幹、山口洋典さん(32)の1日は本堂での朝の勤行で始まる。といっても、得度してから日が浅く「僧侶としてはペーパードライバー」と言い、自転車で、電車内で、携帯音楽プレーヤー「iPOD」の「日常勤行式」に耳をすます。
 應典院は、隣りの大蓮寺の塔頭(たっちゅう)で、97年秋田光彦住職の手で再建された。見慣れた寺のたたずまいとは違って、本堂はコンクリートの円形ホール。「学び」「癒やし」「楽しみ」の場として市民に開放されている。秋田住職を中心に、「應典院寺町倶楽部」が運営してきたが、山口さんが06年春から事務局長を引き継いで切り盛りしている。 

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 應典院の活動ぶりを、山口さんは速射砲のように早口で――
 講師を招いて年5回の「寺子屋トーク」、生と死のテーマについて語り合う月例の「いのちと出会う会」。毎年11月の1週間はNPOやアーティストたちが集う芸術文化祭「コモンズフェスタ」、夏には設立5年未満の若い劇団が競演する「スペースドラマ」。締めて1年間に、講演70回、演劇50本、映画10本。年間約3万人が寺に集まる。
 山口さんは僧侶のほかにもさまざまな顔を持つ。例えば、「上町台地からまちを考える会」事務局長、「きょうとNPOセンター」常務理事、コミュニティFM「京都三条ラジオカフェ」番組審議委員長。06年秋からは、同志社大大学院准教授として教べんもとっている。
 立命館大大学院理工学研究科で合意形成について学び、さらに大阪大大学院人間科学研究科で組織論を研究、博士の学位を取得した。
 地域貢献活動にかかわりを持つようになったのは、大学生の時に阪神・淡路大震災でボランティア活動を体験したのが大きなきっかけという。「人が生きる、大切な人を失うといった命の問題に触れ衝撃を受けた」。 財団法人・大学コンソーシアム京都に勤め、インターンシップ・プログラム作成などに取り組んでいて、秋田住職と出会い、後にスカウトされた。
 應典院10年間の活動は、山口さんらが編集した記念誌『呼吸するお寺』に詳しい。次の10年を山口さんは「寺が町に生かされることによって人々の営みが豊かに、文化的になっていった歴史をひもときながら、この寺がもっと、多くの人の心のよりどころになってもらうようにしたい」。
(文:七尾隆太 写真:ショーン・ケンジ・マドックス)

取材日:2008年2月1日

[参考]
應典院 http://www.outenin.com/
山口洋典のブログ http://catalyst.blog.drecom.jp/
山口洋典ホームページ http://homepage.mac.com/yamaguchihironori/