「アートコンプレックス」を追求
小原啓渡さん
『男達の大和/YAMATO』の編集を手がけた東映京都撮影所の米田武朗さんは、フィルム上映を交えながら編集技術の裏話を話した。元OSK日本歌劇団のトップスター那月峻さんは、男役の魅力と秘密を披露。「新聞女」で話題の現代アート作家、西沢みゆきさんは新聞で作ったドレスを着て聴講者らと街に繰り出した――。
8月の4日間、さまざまなジャンルのアーティスト38人を講師に、ワークショップ(体験型講座)が大阪市内で展開された。大阪21世紀協会などが主催した「大阪ワークショップフェスティバル 38DOORS」。このイベントを企画・制作したのは、舞台プロデューサーで大阪市立芸術創造館館長の小原啓渡さん(47)。「人と人が触れ合い、やりとりすることが少なくなったネット社会では、直接教えたり、学んだりすることが求められる」。ワークショップだけのフェスティバルは恐らく、世界でも例がないという。
同志社大3年の夏、「失恋をきっかけに、何もかも捨てなくなって」退学届けをポストに投函してインドに向かった。親にも内証だった。インド国内をくまなく、隣国のネパールにも足を伸ばして約1年半の放浪生活。初日を見ようと登ったヒマラヤでは、夜半、吹雪のなかで遭難しかける。そのとき、睡魔から覚めて見た月明かり――。たまらない感動を覚えた。こんな体験が帰国後、照明技術の仕事に向かわせる。
舞台技術会社の設立、イベントの仕掛け、フリーペーパーの編集発行、著作、サロン&バーの開設、名村造船所跡(大阪市住之江区)を活用したアートの複合施設の開設……。幅広い人脈と発想力、軽いフットワークで活動の舞台はジャンルを越えて広がっていく。
「アートコンプレックス」が小原さんのモチーフだ。「美術、音楽、演劇などジャンルごとに縦割りになっている現代アートを複合させるところに新しいアートが生まれる」。ワークショップについては「食関係などジャンルや外国人の参加を増やして、いずれ世界のワークショップが1千集まるイベントにしたい」。
(文/七尾隆太 写真/仲田千穂)
[参考]
アートコンプレックス http://artcomplex.net/
小原啓渡執筆集 http://www.artcomplex.net/text_archives/index.html