大阪ブランド情報局

京阪神の都市文化を広く発信

江 弘毅さん

 「オモロい」を最優先課題とし……。雑誌・本などの編集に携わる「株式会社140B」(大阪市)はこんな理念を掲げている。「関西の都市文化を全国、全世界に紹介する」ともうたい、京阪神を深堀りする企画を得意とする。最近出た京都案内本『キョースマ』(淡交社)、路地の飲食店などを特集した『大阪おいしいROJI村』(JTBパブリッシング)、70歳代向けの『ななじゅう○』(フィード)も「140B」の手による。店の案内にとどまらず、店の人や街の雰囲気も伝えようとの意図が伝わる。
 この編集集団の顔が、取締役編集責任者の江弘毅さん(49)。以前勤めていた京阪神エルマガジン社(大阪市)をやめて、同僚らと06年4月設立した。オフィスは大阪・中之島、ダイビル内の140B。部屋番号をそのまま社名にした。「イチヨンマルB」と読む。

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 江さんは、「エルマガ社」が89年末に創刊した月刊誌『ミーツ・リージョナル』の編集に当初からかかわり、93年から13年間編集長を務めた。「まちを消費空間としてだけとらえるのはつまらない。まちには特有の手触り、生活感があるのだから」。在来の情報誌にない視点、工夫が読者に受けた。
 「街的」「街場」など独特の言い回しを交えながら、時に大声で、まちづくり論を闘わせる。現場を長く見続けてきた体験を『「街的」ということ―お好み焼き屋は街の学校だ』(講談社現代新書)にまとめた。
 編集だけでなく、『本の雑誌』始め雑誌6本の連載を執筆。ほかに、月1、2回ラジオ放送に生出演、神戸女学院大などで教壇にも立つ。
 大阪・岸和田に生まれ、「だんじり」とともに育つ。03年には若頭筆頭を務めた。この体験をもとに、『岸和田だんじり祭 だんじり若頭日記』(晶文社)を出版。「18年がかりでまとめた」編著『岸和田だんじり讀本』(ブレーンセンター)も出した。
 関西の出版業界には逆風が吹き荒れているが、「しんどい、と言っていても仕方ない。我々には企画力とマンパワーがある。(地元を知り抜いた人たちの)強力なネットワークがある。140Bは、これからもっと自社出版に力を入れていく」。
 オフィスのあるダイビルは立て替えのため、来年夏取り壊される。移転しても「140B」の社名は変えないという。
(文:七尾隆太 写真:竹内 進)

取材日:2008年4月30日

[参考]
140B http://www.140b.jp/staff.html