「大福」の街づくりの先頭に立つ
松下俊一さん
大福ストリート。福々しい呼び名のこの通り、JR福島駅(大阪市福島区)から朝日放送(北区大淀南)あたりまでのなにわ筋と一本西側のあみだ池筋の界わいの愛称だ。かつて住宅、倉庫や町工場が混在する“駅裏”だったが、10年ほど前から、レストラン、カフェなど飲食店が急に増え出し、新しい人気スポットとして注目されている。
賑わいに先べんをつけた1人が、店舗プロデューサーで、松下シティアス(大阪市)専務の松下俊一さん(58)。倉庫を、骨組みなどはそのままに、レストランやダイニングバーとして再生させ、話題を呼んだ。こんな店舗が次々にオープン、松下さんによれば「今では、空き待ち状態」。
街の活性化につれて持ち上がるのが路上駐車・駐輪、落書き、ごみなどの環境問題。松下さんらは、「問題が起きる前に対応を」と近隣に呼びかけて、01年8月「大淀・福島街づくり協議会」を設立した。以来、会長を務めている。行政区がまたがる、こうした民間の街づくり組織は例がないという。地元3小学校のアンケートをもとに「子どもが楽しく遊べ、大人がくつろげる街に」がモットー。ごみを拾いながらゴールを目指す「大福エコ・ウォークラリー」、力士を招いて子どもたちとの「わんぱく相撲」の開催などさまざまな活動をしてきた。「活動が抑止力となり、この辺には風俗店がない」と松下さん。
「建物をつぶして開発するのが街づくりとはき違えている人が多い。既存の建物を利用することが大切」が持論。鶴見区でも、自社倉庫9棟を再生、飲食店など8店舗が入居する「鶴見ギャリー」を昨春オープンした。
松下さんは、画家「大門まるう」としての顔も持つ。画家をめざして同志社大文学部(芸術学専攻)に学び、在学中にオーストラリアで1年半、油絵の修行も積んだ。「まるう」はその当時の友人がつけたあだ名。「真夜中の画家」を自称、仕事の合間を縫うように描き続けてきた。数えで還暦を迎えるのを記念して、8月に大阪市内で13回目の個展を開く。合わせて、これまでの人生をエッセーとポップアートにまとめた『回帰線ゼロ』を出版する。「60年を生きたのを機に、回帰してゼロから出発する」との心境を込めた。
「大福」の中核だった朝日放送が6月、福島1丁目に移転する。これに伴い、協議会の範囲を広げて再出発する構想を練っている。
(文/七尾隆太 写真/竹内 進 )
[参考]
松下シティアス http://www.city-us.co.jp/